ヤマト運輸「3万人個人事業主切り」で思う事
ニュースでも大きく取り上げられた、ヤマト運輸の「個人事業主約3万人とのの契約を一方的に打ち切り」の話題について個人的な意見を
今回の「契約打ち切り」はその携わっていた商品「クロネコDM便」も「ネコポス」等に関わっていた人たちが主に対象になります。どちらも主力の「宅急便」(今回の決定はこちらに経営資源を集中させる為のもので、こちらを配達する業者は継続)共にサイン不要でポスト投函する商品なので、業者さんが得る単価お「宅急便」よりはずっと安いです。なのでその分「数」をこなさなければならない。
気になるのはその配送に従事していた人達。加えて言うなら営業所内でメール便の仕分け作業に従事していたスタッフも契約解除の対象に。
軽くて配達の単価も安い荷物なので、軽自動車など使っていては儲けになりません。原付きバイクでも交通法規を守らねばならないので市街地では自転車の方が早いです。従事するのもも現役を引退したシニア層や主婦がメインだと思われます。お察しの通り前者の方々にとってその仕事すら失うという事は相当に大きな痛手で、企業側は「再就職を支援する」とは言ってますが、かなり難しいのでは、というのが個人的な意見です。
随分前からヤマト運輸や佐川急便等では、求人広告に際して「運転免許無しでも可」などと書かれていて、かつての経験者である私も驚いたりしましたが、今回はそうやって集めた人たちが一斉に切られた、という構図で、自転車でも扱えるメールの様な軽い荷物を扱う会社はもうどこにも無いのが現状です。
我々配送業者の間では、ヤマト運輸は宅配のシェアが1位なだけはあって、エリアが狭い割には配達の密度が高く「金になる」反面、「何時クビを切られるか分からない」という事も周知されて来ました。現場の責任者レベルで約束されていても、その更に上の立場から命令が下れば一発、という具合です。元々私が在籍していたもうひとつの王手(笑)とはライバル関係にあったという個人的な事情からも、「どんなにお金に困ってもヤマトでは絶対仕事しない」と決めて現在に至っております。
(加えて言うと、ヤマト運輸の荷物を扱うには子会社と契約する必要があり、その条件に「ヤマトカラー」のストライブ状のステッカーを貼り付ける事が義務付けられていたので、「何で個人所有のクルマにそんな事をしなきゃいけないんだ!?」と猛烈に拒否感を覚えていた)
今回の報道で、一部の業界経験者のみの間で知られていた事が広く一般に周知される事になり、それが同社の募集活動に少なからず影響するのでは?と思っています。
運送業界、特に「宅配業界」では、一昔前の「荷物の奪い合い」から、「荷物の投げ合い」へと様相が変化しつつあります。古くは佐川急便がアマゾンと縁を切り、その荷物が大量に流れ込んだヤマトは大パニックに。キャパオーバーになった荷物は更に郵便局へと流れてこちらも大混乱に。
特に2024年問題を間近に控えた現在では、「外注(委託業者)に荷物を任せて社員は早く帰らせろ」というあからさまな構図が見えてきます。
今回についてはどうでしょう?郵便局側は物量の急な変化に戦々恐々する日々が暫く続くでしょう。10月1日に「クロネコゆうパケット」なる商品が早速登場しましたが、出荷する側にとっては、最終的に郵便局が配達するのなら、「(延着、紛失等の)商品事故があった際の問い合わせ先を一本化したい」に決まってるでしょうから、発送も郵便局に切り替える動きが進むのではないかと思っています。
国土交通省の発表資料では、令和4年のメール便の取扱量は郵便局が約334億通なのに大してクロネコDM便は約84億通と約4分の1です。これらが全て郵便局に流れるという構図ですが、郵便局だってそんなにキャパが残ってる訳では無いでしょう。何らかの形で新しい雇用形態を作って欲しい所ですが、郵便局ではメール便は「信書」の扱いなので、職員でないと配達出来ず、残念ながら「雇用の受け皿」とはなりません。
ヤマト運輸としてもかなり大胆な決断だったとは思いますが、今や大手の予想を遥かに上回る勢いで宅配の物量が増え続け、同時にそれに従事したがる若手が減りつつあるのが現状です。私も長年携わってきて「そこそこ」を希望する事がいかに難しいかを実感しています。これは運送に限った話ではないと思いますが、個人事業主である以上、(「それが出来たら苦労しないよ」と言われそうですが、)「別の手」を常に思い描い
て置くことも重要なのでは?と思います。
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