天然ガス自動車のメリット・デメリット(2019年版)

この項では、前回に続き、あくまで私が愛車として使用している「ダイハツ・ハイゼットカーゴ・デラックス。バイフューエル仕様車(改造施工:(株)HKS)を業務用車両、プライベート用途共に使用していく中で、私なりに感じたメリット、デメリット等をご紹介させて頂きます。あくまで、私個人の意見ですが、ご参考にして頂ければ幸いです。

私のダイハツ・ハイゼットカーゴ・バイフューエル仕様By(株)HKS

 

《メリット》

○優れた環境性能と経済性

 CO2の排出量はガソリン車と比較して約7割と言われています。更にその他NOx等の有害物質は半分以下又はゼロに限りなく近いという状態です。条件が良ければ、燃料費はガソリン車の約半分。つまりプリウス等のハイブリッド車に負けないコストでの走行が可能です。

重い、走らない はもう過去の話。使用する上では余程の積載状態か急な坂道でない限り、走行性能ではガソリン車と違和感はありません。パワーが欲しければ走行中でもガソリン運転に切り換えられます。その気になれば、ガソリン+天然ガスで、700km前後の無給油走行も可能です。(ドライバーがもたない‥)

○静かに、快適に走れる
比較的上級のグレード車をベースにした甲斐があってか、(最上級のクルーズの次に来るモデル)内装も防音/断熱素材が多少使われている為、CNG走行時は1.3Lクラスのコンパクト・カーと同じ位の騒音レベルといってもいいと思います。
(このクラスのレンタカーをよく借りますが、こと「音」に関しては乗り換えても殆ど違和感がありません)
 ヘッドフォンで音楽を聴きながらの高速道路を走る。という、かつては考えられなかった事が、今は当たり前に出来ています(夏場のエアコン使用時だけはちょっとキツかったかな?(笑))。
 室内も、荷室の床も、マフラーから出てくる排ガスも熱くなりません。

「ガス欠」してもガソリンで走れるからもう行き場所を制限されない
 万一ガスが切れて止まってしまったら即アウト、常に天然ガスの残量メータとにらめっこしながら走らなければならなかったCNG専用車に比べ、残量を気にする事は殆どなくなりました。まれにイレギュラーに距離が嵩んだり、多忙で日中営業しているスタンドに行けなくなたり、又は何故かスタンドにトラックが沢山並んでいて「とても待ってられない!」(中型以上のトラックの補給は結構時間がかかります)と、天然ガスを使い切った後にガソリンで走るという事もありますが、それも「チェっ」で済む問題というのは、乗っている側にとっては非常に有り難いです。

(逆に、「ガソリンが切れたら始動時からガスで走る」というエマージェンシー機能も付いています–一度も使った事はありませんが)

 
○寿命が長い

  現行のバイフューエル車でもそうかと言えば、まだ確定ではないのですが。
ガソリンの軽自動車の寿命が約20万kmと言われる中、かつて所有していたCNG(2004年型ハイゼットカーゴCNG)は32万kmまで走りきりました。
  (エンジンはまだ健康体だったが、ボディの方が限界に来ていた)

又、システムはエンジン始動時にはガソリン。水温が80℃以上を検知してCNG運転に切り替わるのですが、都会の小口配送という、クルマにとっては超シビアなコンディションの中、気温が40℃を超えた猛暑の中でも、問題は全く起きませんでした。

○リサイクルが簡単である
 天然ガス自動車、及びバイ・フューエル車への改造は、ハイブリッド車に比べれば遥かに少ない部品の追加で済みますので、ガソリン車と殆ど変わらない方法で廃棄処理が可能です(高圧容器を除く、ですがマニュアルに沿えばいいだけの事)
 この辺りは製造時にCo2を多く排出し、リチウムイオンバッテリーのリサイクル方法も確率されていないハイブリッド車とは大きな違いです。
 
 【2019年8月追記】
 あと、商用トラック等については、
 ○税金が安い
    エコカー減税対象自動車として導入時に取得税が非課税、重量税が免税されるだけでなく、以後の自動車税についても優遇措置がとられます。
  又ディーゼル車が経年10年で、LPガス車が13年で15%の増税になるのに比べ、天然ガス車はその括りがありません。


《デメリット》

▼改造費が高い。
よくガソリン車か。ハイブリッド車を選ぶか?との問いに、車両価格の差額がペイできる程に距離を走るか(ガソリンを消費するか)どうか?というのがあります
 例として各メーカーのコンパクト・カーのガソリン車とハイブリッド車の価格、それと価格差をご紹介します(全て税込み価格:2019年1月5日現在です)

 トヨタ・ヴィッツ
    F“Amie”      1,513,080円
   HYBRID F“Amie”2,070,720円
   価格差      557,640円
 日産・ノート
    S        1,421,280円
   e-POWER S    1,901,880円
    価格差        480,600円
ホンダ・フィット
   1.3G F     1,428,840円
         HYBRID・F         1,847,880円
   価格差      419,040円

 それらに比べて、私のハイゼット・カーゴのCNGバイフューエル化への改造費用は約890,000円。苦労の末に補助金制度を活用できた為、自己負担額を23万円程度にまで抑える事ができましたが、この制度はかなり敷居が高いです。又、2018年度以降、国土交通省からの補助金は従来の「改造費の二分の一」から「三分の一」へと減額され、利用者への負担は更に増えています。
     
 新聞である自動車雑誌記者のコラムに「補助金を頼りにしている間は(電気自動車の)一般への普及なんて無理」とありましたが、天然ガス車も同様で、この改造費をハイブリッド車の価格差と同程度にまで抑えない事には、一般車両への普及はかなり難しいと言えます。

▼補給施設が少ない
 ここ数年、スタンドの数は横ばい状態ですが、それでも絶対数が少ないのは確かです。平成29年1月に「危険物に関する法令」が改正され、天然ガススタンドの新設に関する敷居も少し低くはなったのですが、未だにその効果は現れてはいません。
 スタンドを運営する会社によっては、地域によっては年末年始に補給できない所も出てきます。(私の場合は、「そうなったらガソリンで走ればいい」だけの事ですが)

▼導入に向けてのプロセスが多い
 2019年1月現在、トラックを除けばメーカーが販売する天然ガス自動車はありません。
 そのためCNG化してくれる事業者を選んで改造を発注し、且つ構造変更を申請して乗るという手順が必要になります。
  その時点で「特装車」となる為、メーカーの整備工場であってもメンテナンスは受けられません。(ってお断りされたた割には「車検いかがですかぁ?」の電話がよく来るけどなぁ)
 そのため納車後のメンテナンスには、予め了解を得た整備工場のみに依頼する事になります。初期不良等に伴うクレーム交換も、基本NGです。
 更に細かい事ですが、普通ディーラーの整備工場は平日を定休日にしていますが、私が入れる整備工場は親会社(ガス会社)に習って土日祝を休んでますので、平日を常に稼働させたいという用途の場合には注意が必要です。
    
▼維持費が多少高くなる
 車両の法定点検等とは別に15,000km毎のシステムの点検、高価な白金プラグの交換、高温になるエンジンの為に全合成のオイルを使用、ノーマル比80kg増に伴うブレーキパッドの摩耗など、ランニングコストは若干普通のクルマより高くつきます。ガソリン専用車との燃料代の差額には十分収まってはいますが。

▼4人乗りの車両が2人乗りになる(HKSハイゼットの場合)
 天然ガス自動車に改造する企業の中には、スペアタイヤを搭載する位置(車両の底の部分の一番後方)に高圧容器を設置し、スペアタイヤを荷台に移すといったレイアウトをとる所もあります。
 この方が荷台の容積を確保できて、かつイザという時に4人乗れる。いい事ずくめの用ではありますが、スペアタイヤ搭載位置に収納できる高圧容器の容量が限られるのでは?と予想される事と、あの重い高圧容器をケツにつり下げて、ハンドリングとか車体への影響とかはどうなのか?というのが個人的な感想です。 
 私の場合は、私用での利用はたまにあっても、99%が事業用の利用ですから、これで良しとはしています。

▼私物を置くスペースが無い(笑)
 1日の半分をクルマと共に過ごす軽配送では、地図やその他の道具に加え、私物も結構乗せます。私の場合特に多いのが「飲食物」ですね(笑)
 以前使用していた旧型ハイゼット・カーゴCNGでは、高圧容器と運転席の間に、後部座席の乗員の足を置くスペースがありましたので、板を貼ったその下に色々モノを置くことが出来ましたが、現在は運転席の直後にそれがある為、そのスペースが全くありません。
 旧型に比べて荷物は勿論、小物を置くスペースは増えましたが、それらは全て仕事で必要なモノで占められているので、助手席の足元に大人しくさせている状態です。

CNエボリューション

個人事業主として軽貨物事業を営んでいます。天然ガス自動車を業務に使用していく事の、良かった事、悪かった事、面白かった事、色々ご紹介して行きたいと思います。

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3件のフィードバック

  1. 小林 より:

    CNGは平成12年辺りから普及すると予想してステーションも市内に出来たが車両が普及しないので短期間で閉鎖されました。あらから20年経過しましたがそれと同じようなことが電気自動車にも言えるのかなと見ています。充填拠点が多いのは地方ではタクシー需要のあるLPGです。営業時間は短いが拠点数が多いので助かります。それにしても今のガソリン価格は値上げ理由が明確にされない異常高で改めてCNGを見直したいところです。

    • コメントありがとうございます。
       普及の妨げになってるのはやはり高圧容器の価格ですね。
       何せベース車から改造するにしても、作業内容は余り変わらないのに改造費が7割近く高い。
        ただ都心部では、CNG同様にLPGも少なからず閉鎖されています。JPN-TAXIが増えて燃費が良くなり需要が減った事も起因していると思います。
       同じベース車をハイゼットとした場合、荷台のフラットを維持できるLPGも有りかとは思いましたが、「容器検査は自分で外して持ち込み」がネックになりましたね。それと重量バランス。LPGにした際、容器は最後尾となりますから空車でもケツが重い(笑)
      CNGの重い容器を抱えて走るよりはマシかも知れませんが…

  1. 2019年10月6日

    […] 【実際の燃料代】や、【天然ガス自動車のメリット】でご紹介した事とは裏腹に、色々なデメリットも存在します。以下は2004年製造のメーカー純正車に乗っていた私の個人的な感想です。全ての天然ガス自動車がそうであるという訳ではありませんので、ご了承下さい 【2019年7月9日補足】こちらでの記事で書きました「2004年型CNG」は、発売後15年を経た現在、高圧ガス容器法の「使用期限15年」に抵触する為、これ以降は高圧容器を交換しない限り使用する事ができません。あくまで私個人の備忘録として留めていただければ幸いです。「天然ガス自動車のメリット・デメリット2019年度版」も併せてご覧下さい。 […]

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