天然ガス自動車とLPガス自動車
非常事態宣言が続く中、私にとって有り難いのは燃料のガスの単位価格が過去最低の水準まで下がっている事。近所のスタンドがレギュラー140円なんて価格を掲示される事もある中、単位あたりで、何と約30円安い価格が続いています。ガソリン価格の上下に一喜一憂しない。それも又ガス車の魅力ですね(笑)
新しい情報が滅多に入らない天然ガス自動車の世界とは違い、以と外LPガス自動車で新規に改造バイフューエル車の製造、販売に乗り出す企業が増えています。
実際、天然ガス自動車とLPガス自動車。どちらが良いんだろう?
環境によろしいのは前者ですが(後者は単位辺りのCO2排出量はガソリンに比べて低いが、同じ距離を走った時にそれ以上の燃料を消費する)事業者、特に私の様な個人にとってはやはり経済性。
そこで比較してみました。
トヨタ・プロボックスの場合、車両価格+改造費とHV車との価格差は数万円と微妙な所ですが、HVをLPG化すれば正に鬼に金棒。
1.走行性能。 CNG ○ LPG ▼
LPGに乗った事が無いので、一部憶測が入ります。
LPGは中型車以上になるとゴミ収集車以外に殆ど見当たらず、大型車になるとググっても出ません(笑)。出力はガソリンの約8割弱と言われ非力で高速・長距離走行にも向いていないのだと思います。
また、レーシングカーもありません(笑)
過去の資料として2000年前後に販売されていたハイゼット・カーゴの
ガソリン車が48ps/5900rpmだったのに対して、
CNGの最高出力が39ps/6400rpm。
更に同LPGでは35ps/6400rpm
という具合。
CNGのガソリン比2割ダウンは大きいですが、LPGは更に‥という具合です。
この当時の具合からして「非力な」というイメージが未だについているのではないかと思います。
現在(2021年)の技術だとどうか?
同じくハイゼット・カーゴのガソリン車が53ps/7,200rpmに対して、
CNGは48ps/7,200rpm(アネブル社製の場合)。結構な進化です。
LPGの資料については情報が得られませんでしたが、同様に進化している筈ですから「少し落ちる程度」なのでは?と思います。
更に出力に余裕のある小型車ベースなら十分実用レベルではないでしょうか。
私も時として仕事中パワー欲しさにガソリンに意図的に切り替える事がありますが(過去4年で僅か3回(笑))、最新のLPGバイフューエルの中には必要に応じてガソリンに自動で切り替わるものもあるとか。
しいて言えば、カタログ重量がハイゼットの場合、私のCNGバイフューエルよりも更に40kg重いのが気になります。
2.実燃費 CNG ◎ LPG ○
LPGの経済的な魅力とは、技術が進歩しても尚「燃費は良くないが、それ以上に燃料代が安い」から。燃費でガソリンより3割悪くても、燃料代が4割安いという具合でしょうか?、私がかつてのメーカー車(CNG専用車)で経験した様な、実戦レベルでも3~4割の向上というのは、失礼ですが見込めない気がします。
帰省などでCNGで長距離を走ると、かなり魅力的な経済的メリットを感じて来たのは以前にも書いた通りです。因みに過去の帰省時の燃料消費量を現在のガスとガソリンの価格で換算値を出すと、32km/L以上なんて、自分でも信じられない数字が出ます ※根拠としてガス価格が当時より2割、ガソリンは5%ダウン)
燃料を満載したLPGの軽で約900km走行可能とありますが、定地走行だけなら元々のガソリンで500km以上走れる筈ですから、残りの距離をほぼ同じ量のLPガスで走れば‥という事ですね。走行可能距離よりも、補給したくなった時に手軽に補給出来る事の方が大事だと思います。
ただ、前述しました「HV車をLPG化」すると、もう敵いません。あるサイトの情報では、LPG化した日産ノートe-Powerの燃費は何と40km/L!
(サイトでは24km/L(LPG)と謳っているので、価格で換算値をこちらで算出しました)
3.改造費 LPG ○ CNG▼
私のCNG改造費が約80万円。LPGは約40万円とCNG車の半分。(ハイゼットの場合)
天然ガス自動車で使える補助金制度は、審査に通れば最大6割の補助。
ですが、旅客または貨物運送事業者が主な対象の為、一般企業の営業車とかはまず無理です。
この場合のLPGの改造費用には陸送、諸手続き等の費用は含みません
LPGにもLPガス協会からの補助金が、申請すれば改造費の1/2が補助されはしますが、これは「災害時対応型石油ガス自動車」というもので、条件に「災害時には人や物資の輸送手段確保の為車両の提供・運用協力を誓約する事が出来得る者とする。」とあるからです。身近で大災害が起きた際にはそのクルマで普及活動に来て下さいね」という事。ボランティアしない訳ではありませんが‥。
なので補助金制度に頼らずガス化するとしたら、現実的な選択範囲はLPGになってしまいます。
4.居住性(又は積載性能) ▼CNG. ▼ LPG(但し一部では○)
LPガス自動車が経済性で有利と分かっていても敬遠される第一の理由が、大きなガスタンク。SUV全盛の昨今ともなると尚更で、単位辺りの走行距離がガソリンに比べて伸びないから、自ずとタンクも大きくなるという具合。
CNG、LPG共に比較的小型のタンクをスペアタイヤの位置の搭載して室内空間を確保している場合もあり、ハイゼットの場合だと普通に4人乗れます。
ただその分距離が犠牲になるので、短距離の用途に絞られると思います。(それでも200km近く走れれば私のCNGと同じかな? 走り切った先にスタンドがあるか、開いているもまた別の問題)
5.スタンド数 LPG○ CNG ▼
約1900対260と、数そのものはもう「圧勝」に近い感じです。
東北地方より北には皆無状態のCNGも、LPGなら全国の主要都市にあります。
心配していた支払い方法も、現金払いにも対応している様です。
ただ、分からないのは、私自身がそれを理由に敬遠した「営業時間」
。
改造メーカーの中には、熱心にLPGスタンドを検索できるアプリまで開発・公開した所もありますが、タクシーが本稼働に移る夜間帯に閉めるオートガスも少なく無い様です。(CNGも同じですが‥)
CNGの「エコ・ステーション」というのに対して、LPGは「オートガス」呼ぶ様ですが、こちらも数の割に早朝や夜間に営業している所が極端に少ないという印象を受けます。更に追い打ちをかけるのが、天然ガススタンドがここ数年横ばいなのに比べて、LPガススタンドは確実に減少傾向。
理由は、タクシーの減少。2005年に30万台だったタクシーは今や20万台を割る勢いで減り続けているとか。加えて「燃費が良くなった」も一因だそうで、個人タクシーにプリウスを使う人は、燃費がいいからと無改造で走らせ、JAPAN-TAXIなるハイブリッド車まで登場した今では避けられない事態といえましょう。またCNGは殆どがGS内に併設ですが、LPGも入れられるGSとなると本当に少ないです。(私の行動範囲でも1箇所しか知らない)
導入を考えるならば、CNG同様に「利用出来るオートガスが数箇所ある事」が必須の様です。
5.メンテナンス CNG▽ - LPG ▼
燃焼室が高温になるのでイリジウムプラグ(普通のプラグの3倍)が必要になる事、同じ理由でエンジンオイルもより上質が求められる事、HVベースでない限り回生ブレーキが無いので、車重の負担がブレーキにかかる事が予想されます。
同じガス車なので、定期的にバルブクリアランスの調整なんてのも必要になりますが、それを回避する為に、先にも書いた加速時や積載状態等の高負荷時にガソリンに切り替えられるシステムを積んでる場合もあるそうですが、それだと逆に私の場合はガソリンばかりで走ってメリットが無い様な‥
心配なのが「容器検査」。CNGが2年毎(車検とは関係ないが、車検の際にやれば無難)に目視で行えば良いのに比べ、LPGは6年に一度とはいえ、容器を取り外して自分で検査場へ持ち込み!加えて、タンクの脱着・検査費用はCNGの検査費用のほぼ3回分に匹敵しますので、導入時にはその辺りをどう行えばいいかを確認する必要があります(一緒にやってくれる所があればGOOD)燃料だけがコストではありません。私のCNGバイフューエルと同様に「特装車」とされ、入庫出来る整備工場が大きく制限される事もお忘れなく。
【結論(あくまで個人の意見です)】
車格や企業形態に依る形で、「中型以上は天然ガス、小型車以下はLPG」という勧め方になるのではと思います。
LPGはハイブリッド車をベースにしてこそ有効だと思いますが、コストはCNG並み(ベース車+ハイブリッド+LPG化)に必要にるので、タクシー並みに走らないと「モト」は取れないでしょう。ガソリン車ベースでも、やはり10万km位走るか?が一つの目安ではないでしょうか。燃費が良いからと気軽に手を出すと、車重と同様思わぬ重荷になりかねませんのでよくご検討頂ければと思います。
こんな例えを
ホンダファンの兄は中古のシビック→軽→フィット×2と、ずっとホンダ一筋で来ました。最後のフィットも片道30km(!)の通勤で18km/Lと中々良い燃費だったのですが、老朽化を機に、何とアクアに乗り換えました。
「セールスマンのトークに負けた」と最初は愚痴ってたのですが、直ぐに「リッター30km走れる」と笑顔に変わりました。趣味の全国の○墳巡りと併せ、現在何と18万km超。「どこで付けて来るのさ?」と突っ込みたくなる位に外観はキズだらけですが(笑)、性能は相変わらずの様です。トヨタ恐るべし。
18万kmをリッター135円でシュミレーションした場合の燃料代は
ホンダ・フィット(1.3Lガソリン) 135万円
トヨタ・アクア 81万円
日産ノートe-Power LPG 60.7万円
一見ノートe-Powerが圧勝の様ですが、兄の様にかなりの距離を走るヘビー・ユーザーでさえ、改造費がペイ出来ていない事がお分かり頂けると思います。兄の通勤路はその殆どが「田舎道」なので、これ以上の好条件は滅多に無い筈です。
因みにですが、私の場合。こと改造費に至っては、1年以上前に既にモトを取れています(計算してなかった(笑))
消費税や仲買手数料、追加メンテ代まで含めればもう少しですが(汗)
最後に一言。LPG改造事業者の中には相変わらず「ハイブリッド」と謳う事業者がありますが、別に動力源が二つある訳ではありません。どんなに賢いシステムを組もうとも、燃料が二種類選べるだけです。くれぐれも誤解のない様。というか誤解される表記をしない様。
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